自動車関連 | 公開日:2016年4月13日 / 最終更新日:2016年5月30日 / 6085view |
こんな男の助手席には乗りたくない! Part1
ドライブデートにいつか行ってみたいな♡と憧れていた中学生時代。
早くもドライブデートに出かけることが出来て、友人にちょっぴり鼻高々だった高校時代。クルマ音痴だったくせに、高級外車で学校まで迎えにきてもらい、またまた優越感にひたった大学時代。(ドライブデートっていいね♡)
ペーパードライバ-のくせに、自動車専門誌の編集部員になってしまい、震えながらクルマを走らせ、都内を右往左往していた新人時代。
数年後……、モータースポーツライセンスを取得してレースに参戦し、さらに愛車を改造して、その勢いでアメリカまで愛車を船で運び、砂漠のレースに出場。クルマ道へ。今に至る(笑)
自分で運転するようになってからは、より、助手席からのジャッジの目が厳しくなったことは説明するまでもございません。
それに加えて、クルマ業界のありとあらゆる殿方の助手席に乗せてもらう機会にも恵まれたので、正直、目も感性もこえています。
速くて強いトップドライバーたちから、数々のクルマを料理してきたモータージャーナリスト、編集者、カメラマンをはじめ、各種様々なクルマ系得意分野をお持ちのみなさま。とくにその中でもわたしが生息するメディア系の周りの方々は、クルマに触れる機会が多いので、運転が上手な殿方がとても多いのです。
これが、わたくしの、いわゆる“助手席経験値”の基盤。
そしてこの経験を踏まえたうえで、今回「こんな男の助手席には乗りたくない!」を、書くことにしました。
数多く乗ったがゆえに、ダメな殿方の助手席もときには当たってしまいます。本当は、素晴らしい殿方の運転をとりあげて、あの運転に身をゆだねた日の思い出を美しく綴りたいのですが、
「2度と乗りたくない、あの男の運転編」を熱く熱く、熱く(編集部に)要望されたので、重い腰を上げて、思い出したくもない、あの日を綴ります。
綺麗好きは良い。
しかし、超絶綺麗好きワガママ男はハイリスク。
クルマはぴかぴか、ドアを開けるとチリ一つ落ちていない新車の輝きを放つ車内。クルマが好きな方や、モノを大事にするメンズの方々にとって、この現象は珍しくない。こういうクルマと遭遇したときは、乗り込むときにとても慎重になる。彼のこだわりに対して、最低限の敬意を払いたいという気持ちからだ。
まず、乗り込む前に靴の底の汚れを払う。お尻からシートに座り、片方の手をシートのショルダーに預け、もう片方の手をシート下に置き、お尻を軸に、くるっと身体を90度、フロントガラス側に向ける。靴は、フロアマット以外に当ててはいけない。
ドアを閉めるときは一度ドアを近づけて、少しだけ力を入れながら短い距離でパンッと1度で締め切る。親の仇をとるかのごとく、バーンッと締める人を時折見かけるけど、あれは、クルマ好きの人には嫌われる。それに見た目も美しくないし、思いやりも感じない。
次に持っていたカバンは絶対にフロアマットの上には置かない。彼から「後ろにカバンを置いたら?」と言われるまでは、自分のヒザの上に置いておくのが無難。よく気を使ってフロアマットにモノを置く女性がいるけど、フロアマットは靴を履いている足の置き場所。そこに置いたカバンを例えば食事のときにテーブルに置いたら、綺麗好きな彼からは間違いなく嫌われる。中には、家も自分の着ているモノも無頓着だけど、車だけ綺麗好き、潔癖症という方もいるけれど……。
話が脱線しましたが、わたしはクルマ業界で生息しているので、少々、許容範囲が広く、クルマに愛を注ぐ殿方に対しては大抵かわいいなって許せてしまう。そんな比較的、心が広めのわたしが身震いした助手席が、超絶綺麗好き、ワガママ男。
クルマは新車の輝きを保ち、車内もぴかぴか。が、乗り込むときに目を疑ったのが、ドアまわりに張り巡らされていたビニールシート。靴を1mmでも当てられないようにドアパネルにはビニールが何重にも貼られていた。それだけでもおののいたのに、乗り込んだと同時に言われた言葉は「土禁じゃないけど、飲食禁止だから」。
――――え? 水も!?
しばらくクルマは進み、高速道路で渋滞につかまった。そして隣から聞こえてきた、バリバリ、ボリボリという音。見れば男がせんべいを食べている。
「飲食禁止じゃないの?」
「俺はいいの、いいの(笑)」
「他人はだめなんだ?」
「だって、掃除するの、俺だし」
――――あー、もう、いますぐにでもクルマから降りたい。でも仕事だ。今日だけ我慢、我慢と、仏さまのように目を半分だけ閉じて何とかやり過ごした。
自分は飲み食いするのに、人の飲み食いは許さない。夏場だったらどうするんだ、脱水症状になるわっ。クルマの中の治外法権。俺様のルール。気分が悪いのを通り越して、気持ちが悪い……。
俺に夢中男の運転。
絶対、お前は女を不幸にする!
後にも先にも、おそらく、わたしがもっとも許せない男は、「俺に夢中男」の運転です。わたくしごとですが、「自分、大好き♡」な人間は嫌いじゃありません。むしろ、好きです。でも、クルマの運転にまで、自分大好きぶりを投入するのは大きく間違っている。道はみんなとシェアするもの。我が物顔に運転していいはずがない。
わたしが見た、そのヒトは、ドライバー歴は長く、サーキットなんかも走ったりしていて、クルマも話題のクルマに乗っちゃったりしていて、そして自分自身の運転に相当な“自信”がある。
言葉は謙虚だけど、運転する態度がそれを示している。
運転姿勢は、いつもイキった感じでのけぞり気味、片手運転をしてみたり、ときおり音楽に鼻歌まじりでのってみたり、そして自分の運転は上手いということを前提に、周囲のクルマの運転に文句をつける。
彼の運転で、もっとも乗っている人々の不快指数を高めるのがペダルワーク。足の動きがスイッチのように動くこと。
じわじわじわ~とアクセルペダルを踏めば、同乗者は嫌な揺れを感じることがなく座っていられるのに、アクセルペダルを、どんっと一気に踏むから、同乗者の身体が無駄に揺れる。ブレーキペダルもガツンと踏む。ガツンと踏むから同乗者は思わず足に力を入れて、踏ん張ろうとしてしまう。ステアリングホイールをまわす手さばきも、クイックで、オーバーアクションで無駄が多い。
さらに周囲をちゃんと見ていない。同乗者にも思いやれないのだから、外のドライバーや歩行者に対しても思いやることが出来ないのは当然といえば当然なのだけど、どんどん気分が滅入ってくる。
「……歩行者優先だよ」
我慢できず、横断歩道で言葉がもれた。
「ははは、さすが、クルマ関係者っぽい助言だね」
「ははは、じゃなくって(怒)」
「怖い、怖い(笑)」
「……(そしてわたしは仏顔に)」
日常でも言葉はいっけん、謙虚で腰が低いけど、やっていることはとっても横柄で自分勝手。自分さえ良ければいいというのが、運転にもしっかりと表れている。「運転中は色々な状況に遭遇するので本性が出やすいんですよー」と行動心理学の先生からも教わったことがあるので、分かってはいたものの、ここまで明確に運転と性格が一致すると、どん引きしてしまう。
わたしは2度と乗らなければ済む話なのだけど、今もなお、周囲に迷惑をかけ続けているかと思うと胸が痛い。どうやったら、あのワガママ極まりない運転を変えさせることが出来るのか。もしくは運転しないように持って行けるのか。カーライフアドバイザーとしても新たなる課題の壁とぶつかった瞬間なのでもありました。
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鈴木 珠美
ヨガ講師/カーライフアドバイザー/モータースポーツ記者。株式会社三栄書房にて、オートスポーツ誌、オプション誌の編集部員を経て独立。独立後は女性誌、ブライダル誌にて「女性のライフスタイル」企画に携わり、編集執筆と同時に車の専門誌の編集記者として活動。2006年~女性のためのカーライフマガジンの編集長を経て、車の楽しみ方、付き合い方レシピ等「車生活」をあらゆる角度からプロデュースするオフィスタマ株式会社を設立。個人では、カーライフアドバイザーやドライブデート評論家として執筆、ラジオ、セミナーに出演。車内の香り選び、お掃除術、成功するドライブデートプラン、運気をアップする車内の整理整頓術などドライバー視点で興味のあるテーマを取り上げて発信している。またヨガ講師としても活躍。事故ゼロを目指して、ドライブの疲れを癒すヨガ、集中力を高めるヨガなど監修執筆も行っている。