自動車関連 | 公開日:2015年9月7日 / 最終更新日:2016年5月30日 / 15940view |
レーシングドライバー 谷口信輝選手に訊きました【クルマ初心者へのアドバイス】
夏休みに運転免許を取得して、これからいよいよドライバーデビューという方も多いのではないでしょうか。運転免許を取得したばかりの頃はちょっとの距離を運転するだけでもドキドキ・ハラハラするもの。出来るだけ早く運転に慣れて、カーライフを楽しむ余裕を持てるようになりたいですよね。そこで今回は、ドリフトで名を挙げ現在はSUPER GTおよびGAZOO Racing 86/BRZ Raceに参戦し、GAZOO Racing 86/BRZ Raceでは今年早くも2年連続シリーズチャンピオンが確定するなど大活躍のトップレーシングドライバー、またクルマ好きとしても知られる谷口信輝選手に、ドライバー初心者に向けて運転上達のコツや谷口さん流のカーライフの楽しみ方を教えてもらいました!
目次
自分の手足のように動かせるようになるとクルマは自分の一部になってくる!
―――谷口さんのクルマデビューはどんな感じでしたか?
僕はもともと乗り物好きで、自転車に始まり高校時代はバイクに乗っていました。クルマの免許を取得したのは18歳の時。初めてクルマを運転した時は、やっぱりちょっと難しかったな。というのも、それまでずっとバイクに乗っていて、バイクとクルマではギアチェンジとかハンドルを切る感じが全然違ったから。たとえばバイクだとクルマ体を傾けて曲がるから、基本的にハンドルを切るということをしないのね。だからクルマの運転ではまず「ハンドルを切る」ってことが違和感で、どのくらいハンドルを回せば曲がるのかもよくわからなかった。そんな戸惑いはあったものの、他の人より上達は早かったと思うよ。なんせ、負けず嫌い(笑) 誰よりも上手くクルマを乗りこなしたい!という気持ちがあってたくさん練習はしたからね。みんな最初はクルマに慣れなくてギクシャクしちゃうかもしれないけど、乗り続けるうちにクルマが自分の一部みたいになっていき、自分の手足のように動かせるようになっていく。そうなるとクルマは便利だし、本当に楽しいよ。
危ない、怖いと思いながら運転するほうが安全
―――運転に自信が持てない。そんな人に、運転が上達するコツを教えてくださいクルマの運転に関していえば、自信が持てないのは悪いことじゃないと思う。いつもビクビクしながら、危ない、怖いと思いながら運転するほうが安全。むしろ慣れてきて自信を持ってきた頃が危ない……。
運転を上達させるには、交通の流れが見えているかどうかも大切だけど、それ以前にまずは自分のクルマに慣れることが大事。運転に慣れない人は、たとえばシフトを見ないとシフト操作が出来ないとか、いざという時にブレーキを思いきり踏むことが出来ないとか、そもそも自分のクルマに慣れていないケースが多いんだよね。自分のクルマを思うようにスムーズに扱え、運転に意識を取られないようになって初めて、周囲の状況に意識を向けられるようになるわけで。そのためには、たくさん運転をして場数を踏むしかないよね。最初は交通量が少ないところで運転の練習をするといいと思うよ。
新しいミスはしょうがない、その経験を活かしていけばいい
―――クルマを傷つけてしまうと心もかなり凹みます。心の修復法を教えてください。
俺も昔はホイールをこすったりぶつけたり、よくやったよ(笑)。クルマに愛着があると、傷つけたときにメンタルが凹むのはしょうがないよね。僕の場合はプロだから、レースで自分の責任でクルマを壊すようなことがあれば、凹んでばかりはいられないで、技術的なミスなのか、メンタルの問題でミスをしたのか、必ず検証する。同じ失敗を繰り返さないよう、その失敗を糧にしていかないとだから。世の中は良いこと悪いこと色々とあるけど、たとえば人生の経験値のチェックシートがあるとしたら、そこにたくさんの“レ点”を入れていくことが大事だと思うわけ。楽しい経験のレ点が増えたらもちろん嬉しいし、失敗したり嫌な思いをしたりしても、新しい経験が出来たと思えばいいんだよ。同じ失敗にたくさんレ点がついちゃダメだけど、新しいミスはしょうがない。新しい経験が出来た!とプラスに捉える。クルマの運転も同じで、同じミスを繰り返さないようにその経験を活かしていけばいいよね。
常に前だけでなく後ろ、横、斜め後ろを見て
―――安全運転のために心がけていることは?
サーキットは確かに凄いスピードで走るけど、ある意味、街中よりも危険は少ないんだよね。みんな同じ方向に走るし、ストレートで急ブレーキを踏む人はいないし、大抵のことは予測がつく。むしろ予測のつかない動きをするタクシーだの自転車だの、バイクや歩行者がいる街中のほうが「まさか」のオンパレードで、俺からすればサーキットよりもはるかに危険。そこを安全に走るには、「まさか」の事態を想像して常にあらゆる方位を見ながら走ること。俺は前だけでなく、ドアミラー、ルームミラーで横も後ろも常に見ているよ。クルマ線変更等で、必要最低限しかミラーを見ない人がいるけど、それはダメ。「まさか」が起きた時に初めてミラーを見ても遅いからね。ミラーに映らない死角にクルマやバイクがいる可能性もあるし、それは常に周りを見ていないとわからない。運転中はいつも自分の前、横、後ろ、斜め後ろを見て、まわりの動きや位置関係を把握しておくことが大事。
ドライブの眠気対策にベビースターは最強だ!!
―――運転中の眠気対策を教えてください
眠気覚しには何か食べるようにしていて、一番いいのは“ベビースター”。運転中、眠くなるとポリポリ食べてるよ(笑)。ベビースターが優れているのは、歯ごたえがあるのと、満腹にならないこと。そういう意味ではスルメもいいけど、車内が臭くなるからね。ガムはすぐ歯ごたえがなくなるからベストでは無い。あとベビースターはこぼれてもクルマに致命的なダメージを与えないのもポイント。たとえばチョコレートみたいに溶ける系は、車内に落とすとダメージが大きいから避けたいよね。食べ方にもコツがあって、大事なのはちびちび食べること。一袋をできるだけ長くもたせないとだし、大量につかむとこぼれる。小腹が空いて眠くなってきた時に食べてみて、ベビースターを。こんなにうまかったのか……‼と感激するから。車内の眠気対策にはベビースター、最強です(笑)。
マイカーを「愛車」といえるクルマとの付き合い方を
―――ドライバー初心者のみなさんにメッセージをお願いします!
心に留めておいてほしいのは、クルマは凶器にもなって人の命を殺める可能性もあるものだから、運転をする以上は常に怖いな、危ないな、と思いながら運転をするということ。これが大前提にあれば、あとは、クルマがあれば行動範囲が一気に広がって、海でも山でも行きたいところへ行けるんだから楽しんでほしいよね。せっかく運転免許を取得したなら色んなところに出かけてエンジョイしてほしいし、さらにいえば、クルマに乗る人たちには「僕の、私のクルマ」じゃなくて「僕の、私の愛車」と言えるようなクルマとの付き合い方をしてほしいなと思う。例えば自分で洗車をしてあげて「キズがついちゃったなぁ」とかクルマの変化に気づく。どうやって動くんだろうってクルマの構造にも興味を持ってみる。カスタマイズして自分らしさをプラスしてあげるのもいい。クルマに触れてクルマを知っていけば、クルマとの距離が縮まって愛着も湧いていくし、楽しみも増すと思うよ。ぜひともマイカーを「自分の愛車」と思えるようなクルマとの付き合い方をしてほしいと思います。
お話を伺った人
レーシングドライバー 谷口信輝
広島県生まれ。16歳からバイクに乗り始め、18歳の時にミニバイクレースで日本一を獲得するも、同じ頃にAE86がドリフト(後輪または四輪を滑らせながら走行する走法)するのを目撃してドリフト走行に目覚め、四輪の世界へ。1996年にはドリフトの全国大会で上位入賞を果たし、その名が知られるようになる。28歳でモータージャーナリストになるべく上京し、2001年からレーシングドライバーとしての活動を本格的にスタート。2001年のD1 GRAND PRIXでシリーズチャンピオンを獲得したのを皮切りに、スーパー耐久レースでは2002年、2005年、2008年~2013年、SUPER GTでは2011年、2014年シリーズチャンピオンを獲得。2015年にはTOYOTA 86とSUBARU BRZによるワンメイクレース、GAZOO Racing 86/BRZ Race プロフェッショナルシリーズにおいて2年連続シリーズチャンピオンを獲得するなどモータースポーツ界で幅広く活躍し、誰もが知る人気レーシングドライバーとして君臨する。愛クルマは日産シルビアS15、TOYOTA 86、アルファード、プリウスなど。「愛車は自分の一部のようなもの。いつも綺麗にしておきたいから出来るだけ自分で洗車するし、ガソリンスタンドでも年間相当の洗車代を使っています(笑)」と語るクルマ好き。
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勝部 美和子
カーライフマガジン「アンテーヌ」をはじめとする自動車雑誌、子育てママのための情報誌・サイトの編集等を経て、現在はママのライフスタイル、女性のためのカーライフをテーマとした企画・執筆等を行う。